バーナンキ米FRB議長の発言を解釈すると…

投稿者: whitegru3

米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が、19日にフランクフルトの欧州中央銀行(ECB)会合で行う講演の原稿が18日、ワシントンでFRBによって公開された。

バーナンキ議長はその中で、FRBは6000億ドル(約50兆円)を造幣し、米国債を買い入れることで、意図的にドル安を誘導しようとしているとの主張に対して、自らの立場を徹底的に弁護し、通貨切り上げに消極的な中国に批判の矛先を向けようとしている。

バーナンキ議長の語り口は、まるでかつてプリンストン大学の経済学部教授を務めいたときのようだ。アラン・グリーンスパン前FRB議長による1996年 の「根拠なき熱狂」発言や、ブラジルのモンテガ財務相による最近の「通貨戦争」発言のように、後々引用される可能性のある言い回しは避けている。

バーナンキ議長が予定している発言の一部を、本紙の経済コラムニスト、デビッド・ウェッセルの解釈付きで以下に紹介する。ウェッセルは『バーナンキは正しかったか?FRBの真相』の著者でもある。

イメージ Reutersベン・バーナンキ米FRB議長

経済回復の「二極化」について

「経済政策をめぐる各国間の緊張状態の発生と高まりは、いずれわれわれに、世界的な問題に対する世界的な解決策を見いだせなくさせる危険性をはらんでいる。新興国市場の経済成長率は、先進諸国のそれをはるかに上回っている」

「先進諸国の生産水準は現在、その長期トレンドを約8%下回っている。一方、新興国の経済活動は、対応する(はるかに急勾配の)トレンドラインを約 1.5%下回っているにすぎない。実際、一部の新興国にとっては、経済成長に対する危機の永続的な影響はほとんどなかったようだ。特に中国とインドの成長 は目覚ましく、2005年初め以降、中国とインドの実質生産量はそれぞれ70%超と約55%にも及ぶ」

<解釈>

「中国とインドをはじめとする新興国市場は、驚異的な速度で再び急成長を始めている。だが、わたしがあらゆる努力を尽くしたにもかかわらず、米国は著しい低成長に陥っている。欧州と日本も同じような状況だ。(ため息)」

失業率とインフレについて

「米失業率は、約1年半にわたって10%前後で高止まりしている。これは、危機前よりも約5%も高い水準だ。5ポイントという米失業率の上昇率は、ユー ロ圏や英国、日本、カナダの上昇率の約2倍に及ぶ。景気拡大のピーク時から09年の間に米国で失われた約840万人の雇用のうち、現在までに回復された雇 用はわずか90万人にすぎない。当然ながら、この雇用格差は、過去3年間の生産年齢人口の自然増加を勘案すれば、さらに大きいことが推測される」

「来年になれば、景気は上向きに転じ、失業率はいくらか低下すると見込んでいるが、近いうちに失業率が一段と上昇し、景気回復をさらに脅かす可能性も排 除できない。インフレ率は、景気循環のピーク時以降、著しく低下しており、一段のディスインフレによって景気回復が阻害されかねない状況だ」

<解釈>

「わたしが見たところ、経済状態はよくないようだ。失業率の低下が非常に緩やかであるだけでなく、成長速度がすぐに加速しなければ、失業率が一段と上昇 する可能性さえ懸念される。しかも、わたしを批判する向きはインフレ上昇の可能性を主張しているが、インフレ上昇の兆しはみられない」

米国の財政政策について

「FRBは無党派であり、特定の税制・歳出プログラムに関する提言は行わない。ただし、一般論として、成長を促す短期的措置と、長期的な構造的財政赤字 の削減を目的とした強力な、信認回復を誘発するような措置とを組み合わせた財政政策を取ることで、FRBの政策を補完することが重要だ」

<解釈>

「税金や歳出をめぐる派閥闘争に巻き込まれるのは、ごめんだ。だが、議会とホワイトハウスが、短期的な財政刺激策に、いずれ景気が力強さを増してきたと きに有効な信頼性のある赤字削減策を組み合わせて実施してくれれば、FRBの仕事ははるかにラクになるだろう。お願いだから、それをやってくれ」

ドルについて

「夏場のドル相場下落は、欧州ソブリン危機に関連した春の上昇の巻き戻しを反映した面が大きい。市場に負荷がかかっている時の安全資産というドルの役割 は、米経済が長年にわたって示してきた強さと安定によるところが少なくないようだ。連邦公開市場委員会(FOMC)はドルが国際金融システムで果たす重要 な役割を十分に認識し、ドルの価値を裏付けるファンダメンタルズの強さを維持するとともに世界経済を支えるために最適な方法は、米国が物価安定という点で 堅調な成長を取り戻すことにつながる政策の中にあると考えている」

<解釈>

「先のドルの下落は、(少なくとも当時)欧州は崩壊に向かっていないとみた世界の投資家の安堵のため息を反映している。幸運なことに、投資家はいらいら すると他通貨よりもドルを選好する。実はわれわれはその幸運を失いたくない。利下げや巨額の債券買い入れを実行すればドルは下落するだろう。当然だ。経済 学の教科書に書いてある通りだ。しかし、ドルも他の通貨と何ら変わらないことはわかっている。第1の通貨という地位を維持するのに最善の道が米経済を再び 成長させることだというのも承知だ。そしてそうしようとしている」

新興国市場への資金流入と為替相場について

「一部新興国市場への急速な資本流入で重大な要因は、こうした国の為替相場調整が不十分なことだ。そのため投資家が、相場上昇による追加的なリターンを 見越すようになる。為替相場の調整が不完全なのは、自国通貨の上昇を防いだり抑えたりしようとする一部新興国の当局による為替市場介入が一因だ」

<解釈>

「新興国市場に世界中から投資資金が流入するのは、成長だけが要因ではない。こうした市場の通貨には上昇するしかないと投資家がみているせいでもある」

中国の外貨準備高について

「(新興国市場から先進国への)資本の『逆流』流入の背景にあるのは、新興国市場国に積み上がった外貨準備だ。一部の主要新興国の外貨準備高は、金融危 機以降急増し、現在は5兆ドルを超えている。これは10年前の水準の約6倍だ。中国の保有する準備高は、これら主要新興国の合計準備高の半分に相当する、 2兆6000億ドルをわずかに上回っている」

<解釈>

「人民元が速やかに上昇しない唯一の理由は、中国が人民元を大量に売ってドルを買っているからだ。中国の米ドル保有高の伸びをみれば一目瞭然だ」

人民元の過小評価について

「一部の国でみられる通貨の過小評価は、成長と発展を目指す長期的な輸出主導型戦略にはつきものだ。国内企業に大規模な事業展開や、国内需要だけでは持 続できない多種多様な製品の生産を認めるこの戦略は、経済成長を促し、さらに広い意味では、様々な国の発展に重要な貢献を果たすとみられてきた。だが時間 の経過とともに、通貨の過小評価という戦略は、世界システムとこの戦略を採用する国々にとって、重大な障害となることが明らかになった。

<解釈>

「輸出を促進するために自国通貨を安くすることが、新興市場国にとって必勝法だった時期があった。日本や韓国などもその例だ。だが今やその戦略は、中国と米国に大きな問題を引き起こしている」

障害について

「まず通貨の過小評価は、必要なマクロ経済的調整を妨げ、先進国、新興市場国両方の政策立案者にとって問題を引き起こす要因となる。世界的にみると、二 極化した景気回復と、長引く経常収支の黒字・赤字からもわかるように、成長と貿易は不均衡だ。いずれの状況も持続可能ではない。新興国の強力な成長は、最 終的に先進国の景気回復に依拠することになるからだ。、二極化した成長のパターンは、全体のためにゆるやかな成長が支持されれば解決する可能性が高い」

<解釈>

「中国が早急に人民元の切り上げを実施しなければ、全体に多大な被害が及ぶことになる」

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「第2に、現行のシステムでは、為替レートに大幅な柔軟性を適用している国が重大な負担を強いられることになり、国家間の調整の負担が不公平になる」

<解釈>

「中国人は、ブラジル、韓国、インド、南アフリカ、イスラエルなど幅広い通貨の変動を許容する国々に犠牲を強いている。だが今となっては人民元を早々に 切り上げなければ、中国は競争上不利になる。このような批判の矛先は、米国ではなく、すべて中国の政府に向けられるべきだ」

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「3番目に、通貨を過小評価したままの国々は、国家レベルで大きな対価を支払う羽目に陥るかもしれない。例えば、経済を安定させ、過剰、あるいは不安定な資本の流入に伴うリスクに対応するための独立した金融政策を適用する能力が損なわれる、といったことだ」

<解釈>

「人民元の上昇を容認するならば、中国はインフレ問題への対応がはるかにしやすくなり、近隣諸国も通貨の切り上げも容易になるだろう。それは通貨の上昇を見込んでそれらの国々に大量に流れ込んでくるホットマネーの減少にもつながる」

[リアルタイム・エコノミックス(Real Time Economics)では米経済、連邦準備理事会(FRB)の金融政策、経済理論などに関する独自取材ニュースや分析、論評をリポートする]

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